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伴侶を看取る~真の愛と信頼とは・・・

昨夜は静かな春の雨。
昨日はその細かな雨の降る中、お通夜にお参りいたしました。
日ごろ大変お世話になっている、S先生の奥様が亡くなられたのです。
奥様がご病気であることは存じていましたが、どういうご様子か、なんのご病気かは知りませんでした。
会葬御礼の先生のご挨拶のなかでそれを知ることになりました。

 

 


18年前のある日、平穏だった一家に異変は起こりました。
突如、奥様が自分の名前を書くことができなくなられたのです。
どんなにがんばっても書けない。
病院で診察してもらうと、若年性の脳萎縮、今でいうアルツハイマーの症状でした。
奥様が53歳のときのことです。
それから18年間、先生はじめご家族は献身的に奥様の介護を続けられました。
やがて、奥様は鏡に映る自分をも判らなくなり、鏡をさして「お友だちなの」と言われていたそうです。

 

 

わたしがS先生に出会ったのは10数年前なので、そのときにはもうすでに奥様は健常なご様子ではなかったのです。
先生はいつもいつでも、穏やかに笑みをたたえておられましたが、その奥では辛さ悲しみ苦しみも渦巻いていたことでしょう。。。。
病状的には凶暴になることも珍しくないことなのに、奥様はいつもにこにこと、口にするのは「ありがとうございます」と感謝の言葉だったと伺い、それもご家族の愛に包まれて、安心の中におられるからかもしれないと思いました。

 


奥様の病状は回復するどころか、やがて悪化してゆき、何年か前からは呼びかけても反応の乏しい植物人間と呼ばれる状態になってしまわれました。
お二人がご結婚され、新婚旅行に行かれたのは、奈良・飛鳥路。
先生はそのときの楽しい思い出を歌詞にして、『ひとり薩摩路』という歌の替え歌にして、奥様の枕元でいつも歌っていらしたとか。
奥様は歌がお好きだったそうで、その歌が聞こえると反応されていたそうです。
その様子を思い浮かべるだけで、胸がいっぱいになります。
なんという温かい光景か。。。。

 

 

先生とごく親しい人が、先生が「ちゃんと看取ることが叶って幸せです」とおっしゃっておられたことを伝えてくれました。
そして「(奥様が)長い間よくがんばってくれた。植物人間になっても、ずっと私を支え続けてくれた。有難かった」
そうおっしゃっておられたそうです。

真の愛と信頼で結ばれていたご夫婦。
葬儀の席というのは、やりきれない思いが漂うものですが、昨日はなにか淋しさの中にも温かいお別れでした。
ありがとうございます。

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