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~心とからだの平和~コラム【いってらっしゃい】

今日から三日間、facebookで〜心とからだの平和〜というテーマでコラムを書きます。

このブログでも公開していきますね!

 

〜心とからだの平和〜 1日目

【 いってらっしゃい 】


いつもと同じ朝でした。
カーテンの陽射しもコーヒーの香りもトーストの跳ね上がる音も。
母も弟も勤めや学校に出掛けてしまい、食卓にはわたし、そして洗面所で身支度をしている父。
父が髭をあたりながら「パンを焼いておいて」というのでトースターにセット、父が食卓についたときには、パンはこんがりタイミングよく焼き上がりました。

 

 

ところが、父はそのパンの焼き加減に不満げ。
「僕はもっとうすく焼いた方が好きなんだよ」と。
…はあ?
これ焦げすぎだと?
せっかく焼いてあげたのに。
あのね。
じゃあお父さん自分で焼けば!!

 

 

すっかりふて腐れたわたしは、父を残してプイっと2階の自分の部屋へ。
階下では父が静かに食事をとっている様子、やがて玄関で物音がして、父が2階のわたしにいくぶん大きめの声を掛けました。
「千都子、行ってくるよ」
ふて腐れっぱなしのわたしはわざとその声を無視。
父はもう一度言いました。
「行ってくるよ」
さらに無視。
返事がないことを責めるでもなく、そのまま鍵をかける音がして、父は出掛けて行きました。
そして、このときの「行ってくるよ」は、わたしが聞いた父の最後の言葉となったのです。

 

 

父はこの日の夕方、暴走車にはねられ他界しました。
父が亡くなって以来、あの朝の出来事は痛みを伴ってわたしの中にあります。
なんであのとき階段を下りて一言、「いってらっしゃい」と言わなかったんだろう。
なんで笑顔でお父さんを送り出してあげなかったんだろう。

 

 

当たり前の日は当たり前に続くと、わたしたちはどこかで安心しています。
でもそれは錯覚に過ぎない。
父はわたしにそれを教えてくれました。

 

 

だから
わたしは今日も、温かい思いと、とびきりの笑顔をけっして出し惜しむことなく過ごしていこうと思うのです。

ありがとうございます。

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