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きんもくせいが香ると・・・胸の痛む個人的な理由

人生で一番・・・悲しかった日はどんな日ですか?

わたしは

父が事故に遭った日。

父は、無免許の少年の運転する暴走車にはねられ他界しました。

わたしが大学生だった10月、ちょうど今頃のこと。

 

 

わたしの父はもの静かで優しく、常に本を読んでいるような人。

とても上品で、粗野なことを嫌いました。

父の口から乱暴な言葉は聞いたことがない。

悪口も聞いたことがない。

穏やかで誠実で、ロマンチックで、文芸や歴史のことに明るく・・・・あぁ、こうして書くと・・・父の良いところがいっぱい見つかるのに、

なんで生きているときには、わたし、お父さんに優しくできなかったのかな。。。。

理由などないのに、思春期以降、なんかお父さんってうっとおしくて、あんまり一緒にいたいとは思えなかった、正直。

「お茶を淹れてくれる?」とか言われたり、「○○をとって」などと頼まれても、それ普通のことなんだけど、なんかとても面倒そうにやったような・・・覚えがあります。

 

 

 

だけど、それでも父は(当然のことながら)こんなわたしをとても愛していてくれてました。

あるとき、洋画家・小磯良平の展覧会に行ってきた父が、上機嫌で帰ってきて、

「これ、ごらん、千都子にそっくりだろう!?あんまり似ているから買ってきた」

と見せてくれたのは小磯画伯の婦人像の絵葉書。

しかも何枚も買っていて。

しかも、、、あの、ハッキリ言って、全然わたしに似ていない!!

それも全然ですよ?

小磯画伯の婦人像は似ても似つかない気高い美人像。

・・・・わたし、またそれにイライラっときて、渡された葉書もポイとテーブルの上におき

「どこが似てるの?ぜんっぜん似てないやん、髪型だけやん!!」

そんなふうに乱暴に言い放ってしまったのでした。

父は、私が投げ出した葉書を見ながら

「そうかなぁ、似てるように思うんだがなぁ~」とすこし淋しげ。

はぁ?どんな目してるんや?・・・とわたしはまだ内心毒づいておりましたがね、そのときは。

 

 

どんな目?

きっとそれは愛いっぱいの眼差し。

今だからわかること。

 

 

小磯良平展からほどなく、ある秋晴れの日、父との別れは突然やってきました。

毎年きんもくせいが香り始めると、自ずと父のことが思い出されて、胸の奥がしくしく淡く痛みだすのです。

 

ありがとうございます。

(この絵は小磯良平氏の作品ですが、本文の絵とは異なります)

 

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