【ありがとうのじかん】ファンキーモンキー恋する川柳 4月お題「抱く」③
〈4月16日ご投句分〉 *コロナ拡大に伴いリクエスト放送のため未放送分発表
お題「抱く」
*あと少しで入選の句
灯消し枕抱きしめ頬ぬらす
(京都市 里彩)
悪い句ではないが、リズムが良くないのが残念です。
上5「灯消し」は「灯」を「ひ」と読めば3音、「ともしび」と読めば6音。
これまでにも「上5は5音を超えて少々長くてもOK」であることはお伝えしてきましたが、まずは575の基本リズムで詠むことが前提。そして5音におさまらないときは長くなってもかまいませんが、重要なことは「リズムが崩れないこと」を守ること。(ただし、例外として、意図をもってわざとリズムを崩す場合=破調も技法としてあります。)
この句の場合は
→灯を消して枕抱きしめ頬ぬらす
とすればリズムは調います。ただ・・・句意が平凡になる。
なぜか?というと「泣く」を表現する言葉が「頬ぬらす」という使い古された言い方だからです。
川柳はデフォルメ(誇張)してなんぼ、です。
例えば・・・
→灯を消して枕抱きしめ岩になる
身動きもできない悲しみを「岩になる」で表現してみました。
少しでもご参考になれば幸いです。
★では続いて入選句です!
*入選
仔犬抱きつまらぬ日々を自宅にて
(神戸市 ほくら)
これはコロナ休暇?の時事吟でしょうか。
もし、いまの最中でなければ、恋の句にもとらえることが出来ます。恋人からの誘いがない、私にまとわりつく仔犬を抱いて寂しさを紛らわせてもやりきれない。。。。
川柳は17音しかないので、読み手によっていくらでもドラマが広がります。
この句の場合は、下5「自宅にて」を工夫されることでさらによい句となりそうですね。
心もよううつすがごとく抱く薔薇
(明石市 良香)
最高に華やいだ気分の作者。
両腕に薔薇を抱えて、その幸福感は匂いたつようですね。
笑顔の良香さんに薔薇もいっぱいの笑顔で応えてくれたことでしょう。
このように目に入るものは、すべて見ている人のこころをあぶりだします。何を見て聴いて味わっているのか・・・・ということに敏感になることが「川柳の目」=「川柳の腕」を磨くことにつながります。
人見知りもろ手をひろげママ抱っこ
(横浜市 則久)
なんて可愛い句でしょう。下5「ママ抱っこ」の幼子の言葉がそのまま句になっているので、臨場感があります。甘え声のちっちゃな子が、「ママ抱っこ、ママ抱っこ」とせがんでる様子が見えてきそうですね。
上5「人見知り」があるので、さらにその様子がリアルに。
観察眼(心の目での観察)が行き届いた句です。そして、作者の小さな子への優しさのあふれる一句ですね。
どこからかワルツの調べ君を抱く
(草津市 弘子)
踊りたくなるワルツを愛しい人と。
短いひとときであろうとその時間はかけがえない美しくも切ない時間。
このワルツがずーっと流れていてくれたなら。。。
もしかしたらそのワルツは弘子さんの内側から奏でられていたのかもしれませんね!
うかつにも嫉妬を抱く黒い薔薇
(神戸市 和子)
うまい!いいですねぇ~
上5「うかつにも」そして下5「黒い薔薇」に表れる作者の心情。
さらに、「黒」という色も効いています。
私が嫉妬なんてするわけないじゃない!と嘯(うそぶ)いていても、胸にもや~と立ち込める重い感情。目の前の赤バラさえも黒い薔薇に変えて・・・
*特選
最後まで抱えて眠る不発弾
(大阪市 日出夫)
秀逸句。
下5「不発弾」とは、本当なら爆発させたいけど、大人の人間として理性で抑えている「なにか」なのでしょう。
それは「怒り」なのか「悲しみ」か「欲望」なのか、、、、いずれにせよいずれも抱え続けることは耐え難いこと。
それでも作者は「最後まで」それを守りきり、今日を終えて眠りにつく。
平凡な人間の日常、ありきたりな営みにつきまとう哀しみ。
きっと多くの人が共感を得ることでしょう。
皆さま、ありがとうございます
また来週もご投句、お便りお待ちしています。
2020.4.17