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【ありがとうのじかん】ファンキーモンキー恋する川柳 4月お題「抱く」⑤

〈4月30日ご投句分〉 *コロナ自粛に伴いリクエスト放送のため未放送分発表

 

【ありがとうのじかん】5月のお題は「信じる」。どんどんご応募くださいませ。

 

お題「抱く」

 

 

*入選句

安心は抱くと痛いクスリです

(大阪市 亜紀)

「痛いクスリ」とはおもしろい!!

すっかり安堵していたら、びっくりの大どんでん返しはホラー映画の常套手段。

下手に安心を抱くとあとのしっぺ返しが怖いから、ご用心、ご用心。

 

 


力尽き産声だけを抱き寄せる

(大阪市 香奈子)

おもしろい~。

これは出産で力がつきたのでしょうか。

確かに、もうダメ~!というほどの疲労感、力尽き加減なのだけど、可愛い赤ちゃんの産声が聞こえてきて、動かないからだで精一杯その産声を抱き寄せ、夢中で抱きしめる作者。感動の一瞬。

 

 

 

慟哭の夕日を抱いて渡り鳥

(草津市 弘子)

慟哭しているのは、夕日でも渡り鳥でもなく、作者。

夕日に染まりながら飛んでゆく渡り鳥の姿に「夕日を抱いて」と美しく表現されています。

美しくも胸が濡れる光景とその心情。

 

 


こっそりと雲の切れ目に抱く夢

(明石市 良香)

空を見上げながら、過ぎ去り日の夢に思いを馳せる良香さん。

それでも、雲の切れ目から青い青い空が見えたなら、もう一度眠っていた夢への希望が湧いてくる。

空はそれほどの大きな力を持っていると思います。

 

 

 


マウンドで抱き合っている日本一

(大阪市 日出夫)

誰が抱き合っているのか?

それはもちろん選手たちなのですが、日出夫さんは下5「日本一」とした。

「省略」の技法です、省略することで、すっきりするだけではなく、優勝を喜び合い、抱き合う選手たちの姿がより生き生きと私たちの想像をかきたてます。

 

川柳は、こうして書き手(作者)と読み手が作ってその世界を広げていくものなのです。

 

 


箱の中消えた命を抱きかかえ

(京都市 里彩)

かの人がおさまった小さな箱。

あの箱はやはり「持つ」ではなく「抱く」ですね。

この句の中では「消えた命」とまでは言わなくても、「箱の中の命」ということから、愛おしい人が亡くなったことは分かるので言葉の整理をされたらより良くなると思います。

 

川柳は全部で17音しかない短詩文芸。

なるべくカブらない、だぶらない言葉で描いてまいりましょう。

 

 


寂しさを置いてけぼりで猫を抱く

(福岡市 鈴)

佳句。

下5「猫を抱く」に果てしない寂しさと、そして共にある小さな命の温かみがよく伝わってきます。

言葉のすみずみにまで神経の行き届いた、さらりと透明感のある句です。

 

 

 


夢を抱き進み破れてバスを待つ

(神戸市 和子)

この句はなんといっても下5「バスを待つ」がよい味を出しています。

あれこれ夢も抱いていたけど、こうして驚くような成功もなく平穏な暮らしの中にある「バス」。

「抱き進み破れて」が説明的なので、整理されるともっとよい句になりますよ!がんばって!

 

*特選

ふわり抱く小さく丸い赤ん坊

(姫路市 ユミ)

生まれたての赤ちゃんを大切にその腕に抱いているユミさん

上5の「ふわり抱く」というオノマトペ(擬態語)がとてもよい。

その言葉のなかに、命を大切に慈しむ気持ち、かけがえない存在を抱く愛が表現されています。

また「小さく丸い」という表現も、赤ん坊のいとおしさをしっかり描きだせました。

ユミさん、これからもご健吟を!

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